コンテンツ 協力雇用主インタビュー
地域の中で居場所をつくる


働いて収入を得ることは大切だが、働く意味はそれだけではない。そして、人生の再出発を目指そうとする人のそばには必ず、分け隔てなく受け入れ、背中を押してくれる雇用主がいる。
思いを大いに語っていただいた。
Vol.1「職親」の道 父から引き継いだ
Vol.1
「職親」の道
父から引き継いだ


株式会社 河野ボデー製作所
(特殊車体改造・製作、塗装)
河野 征夫代表取締役会長
1956年、河野征夫さんの父斐夫(あやお)さんが広島市南区皆実町で創業した。マツダ・オート三輪の荷台改造で会社の土台を築き、現在は消防車や検診車など特殊車両改造を幅広く手がけている。広島市西区に本社・西部工場、安芸区に東部工場、茨城県に関東工場がある。
1956年、河野征夫さんの父斐夫(あやお)さんが広島市南区皆実町で創業した。マツダ・オート三輪の荷台改造で会社の土台を築き、現在は消防車や検診車など特殊車両改造を幅広く手がけている。広島市西区に本社・西部工場、安芸区に東部工場、茨城県に関東工場がある。
-
「手がキレる」子が辞めないように
職人として「腕が立つ」ことを私は「手がキレる」と言うんですが、昔は、やんちゃな子ほど手がキレた。親父はね、そういう子が辞めないようにと当時の会社の屋根裏を寮にし、朝昼晩の3食を提供して大事に育てていました。それが今で言う「補導委託受託者」の始まりです。「職場での親」だから「職親」と呼ばれた父は100人ほど世話をしたし、それを引き継いだ私も100人以上の面倒を見てきました。寮生の賄いや掃除に奮闘した妻の洋江には感謝しかないですね。
-
逃げ出したら とことん追いかける
この子たちを寮に住まわせるのは、自立するにはむしろ親から離した方がいいと考えるからです。多くて一度に5人ほどいたときもありました。夜中に大騒ぎしたり、抜け出したりする。こっちは注意したり、夜の町に探しに行ったりもしょっちゅう。その子の家庭事情が分かってくるほど、放っておけなくなります。ただ人手が欲しいから雇っているわけではないし、そもそも採用するかどうかの基準はありません。とはいえ職人に向くかどうかはあります。「根気」です。
-
企業の枠を超えて「適材適所」を
妻も体が続かなくなり、しばらく前から寮で預かるのはやめました。やんちゃだけど「竹を割った」性格の子も少なくなってきた気がします。以前から考えていたことですが、子どもたちも働いてみて初めて自分がどんな業種に向くかに気づくことがあれば、自分の過去が知られていない職場に移って新たな挑戦をしたい子もいる。そういうときに企業や業種の枠を超え、適材適所で人材配置をする仕組みができないものか。企業間の「横のつながり」も必要です。
会社概要

株式会社 河野ボデー製作所
- 所在地
- 東部工場
〒736−0084
広島市安芸区矢野新町2丁目3番57号
- TEL
- 082−885−1411
- FAX
- 082−885−2270
- HP
- http://www.konobody.co.jp/company.html
Vol.2再犯防止の取り組み いまだ通過点
Vol.2
再犯防止の取り組み
いまだ通過点


株式会社 SEED総合技建
(一般土木工事、その他)
塚本 直樹代表取締役社長
電気工事業から業務拡張して平成14(2002)年に設立(創業)した。道路や河川、庁舎、学校、病院といった公共施設の土台を築く土木工事を担う。創業した塚本社長はこれまで、ウィズ広島(広島市中区)や呉清明園(呉市)の入所者をはじめ、前科のある500人以上を雇用している。
電気工事業から業務拡張して平成14(2002)年に設立(創業)した。道路や河川、庁舎、学校、病院といった公共施設の土台を築く土木工事を担う。創業した塚本社長はこれまで、ウィズ広島(広島市中区)や呉清明園(呉市)の入所者をはじめ、前科のある500人以上を雇用している。
-
これという特効薬はありません
前科のある人を採用して、うまくいくこともあれば、そうでないこともある。こうすれば成功するという特効薬は残念ながらありません。働く場所を確保して再犯を減らすという今のこの国の取り組み自体が、まだ(ゴールではなくて)通過点ではないでしょうか。本人のやる気を伸ばせばいいと言われても、その人の性分とか本質は短期間では変わりません。ただ、本質は変わらないけれど考え方なら変わるし、そうなると再犯にはならない。僕の肌感覚ではそんな感じです。
-
怒りもせず、達観することもなく
もちろん人件費が安いという企業側にとってのメリットはあります。でも、ワンルームの住居を借り、あれこれと手を尽くして準備しても、すぐに行方が分からなくなるといったことも経験しました。でも、そんなときも僕は「面倒見たのに何だよ」と怒るわけでもなく、だからといって「仕方がない」と達観するつもりもない。本当に再犯防止は難しいですよ。なぜ続けるのかと聞かれれば、それは僕の性質だと答えるしかありません。何かに屈した思いを味わいたくない。
-
保護司の応援があるから続けます
自分さえ良ければいい、ほかの人のことは知らないという、今やこの国は「保身国家」ではないですか。そうした社会風潮の中で、一部の企業が元受刑者を雇用するといった取り組みだけで再犯を防ぐのはかなり難しいというのが実感です。もっと企業が増えてみんなであれこれ模索してみるとか、警察の取り締まりや行政監視のありようなども、ここで考え直した方がいいと感じています。ただ、応援してくださる保護司の方のためにも、やや独創的な就労支援活動を継続したいと思っています。
会社概要

株式会社 SEED総合技建
- 所在地
- 〒734-0055
広島市南区向洋新町2丁目1-10
- TEL
- 082-283-5023
- FAX
- 082-283-5029
- HP
- https://seed2002.jp/about/
Vol.3受刑者に仕事を 月刊求人誌が好評
Vol.3
受刑者に仕事を
月刊求人誌が好評


株式会社 豊生
(塗装・防水・増改築・板金工事、広告代理業)
山本 晃二取締役
2015年春、月刊の「社会復帰応援求人誌・NEXT」を創刊。受刑者向け求人案内を掲載し、各刑務所や更生保護施設に送っている。今や知名度が上がり、当初の500部は約3倍に。都道府県社会福祉協議会の連絡先やフードバンク福山の案内などの関連情報も載せて好評だ。
2015年春、月刊の「社会復帰応援求人誌・NEXT」を創刊。受刑者向け求人案内を掲載し、各刑務所や更生保護施設に送っている。今や知名度が上がり、当初の500部は約3倍に。都道府県社会福祉協議会の連絡先やフードバンク福山の案内などの関連情報も載せて好評だ。
-
最初は自分の会社のためでした
受刑者向け求人誌「NEXT」を創刊したのは、何か社会のためになることをしようと思ったのではありません。 自社の人材拡充が目的です。釈放されたら仕事しよう、でも社会は受け入れてくれるだろうかと不安に思う受刑者がいかに多いことか。僕も受刑者だったから、よく分かります。 刑務所の中で読み、うちの会社の電話番号をメモしていて、釈放されたが所持金がなくなったと小倉から電話で泣きついてきたのもいます。 福山までの新幹線代を送金しましたけどね。
-
光るものを持った人間は必ずいる
だから、うちは求人で困ったことがない。でもね、世の中の企業の多くは「イメージが下がったら…」などとリスクばかり考える。そんな企業のために働こうと思いますか。口幅ったいことを言いますが、彼らも人間です。 残りの人生の時間を削って、うちで働いてくれる。まずは感謝の気持ちが雇う側になければ、何も始まりません。 光るものをもった人間は必ずいます。自腹で新幹線代を送るように、こっちが踏み込んで、それを探すしかない。 僕はずっと、そうしてきました。
-
どこまで行けば「更生」ですか
うちに預けたら更生する。そんな褒められ方をします。でも、更生って何ですか。どこまで行けば、更生できたことになるのでしょうか。僕だって、短気な自分がいなくなったわけじゃない。子ども、家族、仲間…。そうした「壁」ができて、「心の穴」が表に出なくなっただけなんでしょうね。そんな穴を一緒に埋めるのが雇用主の役割ではないかと思います。おっと、また偉そうな物言いになりました。「更生」を別の言葉に置き換えるなら、「ちゃんと生きる」ですかね。
会社概要

株式会社 豊生
- 所在地
- 〒721-0952
広島県福山市曙町1丁目11-12
- TEL
- 084-959-4882
- FAX
- 084-954-6481
- HP
- https://next-kyujin.jp/company/